My everyday life from Yeosu/여수/麗水, Korea.


2015/08/14

それが彼と私のリアリティー





本当に無駄な二年間だった。その二年に意味なんて全くない


とドンちゃんはハッキリと主張する。「意味なんて探す方が馬鹿なんだ」って、聞いてるほうが清々しくなるぐらい、きっぱりと尾を引かずに。さて、ここでいう二年とはなんのことか?

答えは兵役。皆さんもご存じの通り、韓国には徴兵制がある。韓国男子は満18歳以上になると国防の義務が課されるのである。というわけで私の住むこの国では、特別なケースを除きほとんどの男子が約二年軍隊で過ごすことになる。

ドンちゃんは大学1年生を終えた後、入隊。敵に化学ガスが撒かれたら一番に現場に駆けつけなくてはならない某部隊で2年間勤務した後、除隊。大学1年前後なんて、人生で一番自由で楽しい時期なのに、兵役に行かなくてはならないなんてと私は思ってしまう。けれどそれを誰よりも感じているのは本人たちだろう。

誰にとっても、大学行った人も行かなかった人も、10代後半から20代前半のとても大事な時期を捨てて行った2年間。だからこそ、人はその2年に意味を持たせたいものだと思う。若い時間を犠牲にしたけれど「それでも得るものがあった2年間だった」って自分を慰めなくてはやってられないから。兵役で犠牲にした2年間を肯定しなければ、やはりむなしいでしょう。

でもドンちゃんは、それをやらない。その2年を未練なく、否定する。それができる人である。


なぜ、否定できるのか。彼は韓国という国を芯から批判する側の人間だから。韓国に来て思うことだが、韓国を批判する韓国人は、日本を批判する日本人とはレベルが違う。日本人の批判精神は反発心から来るものでイマイチ生ぬるいのだが(自分を含め)、韓国人が母国に対して持つ批判精神は徹底的で、ゆえに全く揺るがない。例えば私が意図的に韓国に対する悪口を言ったとしても、それを受け入れて母国批判にしっかりと繋げることができる。でもこれは普通はできない事だと思う、少なくとも私はできない。いくら日本を批判的に見ているとしても、外国人に指摘されたら内政干渉だってイラッとするから。

彼は韓国に対して徹底的な批判精神を持っていて、私が彼に惚れたのはそう面があるからでもある(爆)

ゆえにドンちゃんにとって兵役というのは耐えがたいものであり、なぜ国家のためにと思っていたのだが、その二年間に意味を持たせないことで以て、その思いを乗り越え国家に抗ったわけである。兵役に意味を持たせたら国家の思うつぼ、と笑うドンちゃん。君の勝ちだと思う。


兵役が終わった後も、予備役があり8年間は年に数回訓練を受けなくてはならない義務がある。それが修了してもさらには40歳まで民防衛として、有事の際は徴集される。

国家に抗うドンちゃんも、国民の義務なので予備軍をこなしている。この前も訓練に行ってきてたのだが、そこで衝撃な事実を知ったらしく、私に教えてくれた。

というのも、どうも有事の際は第一線に送られる可能性が高いということ。第一線というのはもちろん戦場。なぜそれが衝撃かというと、それまでもし戦争が再び勃発したとしても、さすがに戦場には送り込まれず、ヨスの石油化学プラントの警備ぐらいだろうという話を聞いていたから。本人よりもショックを受けていた私にドンちゃんは、


戦場に送られた時、大事なのは勝つか負けるかではなくて、生き残るかだよ


と、サラッと言った。本当に軽く、笑いながら。でも、それを聞いたとき私は後ろから頭を殴られたような感覚があった。というのも、韓国を批判するドンちゃんが言うからこそ、そこにものすごいリアリティーがあったから。ものすごく生々しくって一瞬言葉を失ったぐらい。そしてそのリアリティーは戦争ってどこか他人事だった私に、実はそれってすぐそこにあるものだという認識を植えさせたから。


いやもちろん、実際にまた北朝鮮との戦争が再開されるなんて思っていないけれど。でも、最近三代目が周りを粛清しまくっているニュースを見ると体制の混乱が目に見えるし、政府が財閥を解体しないのは戦争をまたするためなのかなと、ふと思うときもあるし。なにより、休戦状態、停戦すらしていないという現実があるわけで。

じゃあ、もし万が一戦争が再開した、ドンちゃんが第一線に送り込まれた、となった時、私はどうするのかと考えてみたことがある。日本政府は在韓日本人を日本に送るための輸送手段を準備してくれるのかなとか、日本の家族はどう思うのだろうとか、第一線に送られる前にドンちゃんと日本に逃げようかとか(ちなみにその場合は二年間禁固刑、トータルソーシャルディストラクションを与えられる)そんなことをつらつらと考えたけれど、しかしながら出た答えは、ドンパパとドンママを私が守りながら韓国で彼を待とう、というもの。彼や彼の家族をおいて日本になんて帰れない。彼が生き残ろうと必死にその場にいるのならば、私も一緒に生き抜こう。それが私のリアリティー。


つまり、以上を通して考えることは、ドンちゃんや私みたいに国家なんて、と思う人でもいざ戦争になったら、どうしようもないというのが一つの現実だということ。更にいえば、個人の思想なんて関係ない。いつの時代も、徴集されれば行かねばならず、家族は帰りを待つしかない。それが現実。


ここに住んでいるからこそ、この国の人と結婚したからこそ、私は戦争をリアルに感じる。だからこそ、戦争は起こってほしくないと切に願う。願って声に出しただけではどうしようもできないのがこの国の現状だけれども。じゃあ日本は?


明日は8月15日、終戦記念日。平和を願わずにはいられない。






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